自治体職員の境遇
- 財政破綻したらどうなるか

前回記事『楽な役所に就職すると将来どうなるか』で、就職先の一つとして公務員を考えるのであれば、候補として選んだ自治体の将来性を検討しておく必要があると述べました。

財政破綻したとしても、公務員だから多少給料やボーナスが減るくらいで、クビにはならないから大したことはないだろうという印象があるかもしれません。

実際には、財政破綻ともなると、国の指揮下で大幅に、しかも長期にわたり給料がカットされます。

勧奨退職という形でベテラン職員は自主的に(仕方なく)辞めていきますが、中堅・若手職員もこんな給料では生活できない、割に合わないと辞める人が出はじめます。

そうすると今まで200人でやっていた仕事を、残った100人でやらなくてはいけません。のんびりした市役所が、一気に激務部署に変わります。

夕張市は2007年に財政再建団体に指定されました。いわゆる財政破綻です。

夕張市が財政再建団体となった後、東京都庁は夕張市役所への支援として、都庁で一定の経験を積んだ若手職員を応援要員として派遣していました。

現在の夕張市長である鈴木直道氏は、当時派遣された都庁職員の一人です。(鈴木氏は2年間の派遣)

その鈴木氏が当時の市役所の状況について日本経済新聞にコラムを寄せています。

以下にそのコラムを抜粋し、財政破綻後に市役所の職員にどのようなことが起こったか紹介したいと思います。

(抜粋)
再生計画のなかで「行政執行体制の確保に留意しながら、人口規模が同程度の市町村で最も少ない職員数の水準を基本として、夕張市の地域特性等を考慮しつつ職員数の適正化を進めるとともに、職員給与についても全国の市町村の中で最も低い水準を基本として、適切な比較のもとで削減を行う」というルールがあります。
つまり、「サービスは下げないように注意しながら、人数を最少に減らしなさい。給与も最低レベルにしなさい」ということです。

財政破綻後、夕張市の職員の給与は計画(※総務大臣の同意を得た財政再建計画)のもとで運営される18年間、年収平均40%カットと決まりました。当然のことですが、退職した後の年金支給にも大きな影響を受けます。

早期退職をうながすため、段階的な退職金のカットも行ったので、定年退職を控えた部長、次長は全員、課長、主幹は5名を残して退職し、53名いた管理職は10分の1になりました。
また、管理職の一斉退職を受けて、平職員が経験の無いなか管理職となるなど、混乱のなかで重責を担う精神的な負担や給与削減による生活不安などから、まだ転職できる働き盛りの30代を中心に、ともに働いた仲間を残し、苦渋の選択を迫られるなかで退職していきました。
ベテランも含む260人いた職員は現在105人、半数以下です。課題は山積、仕事量は増えるなかで残された職員は遅くまで懸命に働いていました。

最初のころ、一番驚いたのは、市役所の経費削減のために午後5時になると暖房を切ることです。
 冬はマイナス20度ちかくになることもあり、室内でもマイナス5度だったこともありました。退職者が相次ぐなか、引き継ぎもろくにできずひたすら資料を引っ張り出してパソコンにむかい入力する作業を繰り返していました。
 退勤時間をすぎた午後5時をすぎても誰一人気にとめず作業をしていました。

 やがておもむろにみんな立ち上がり、スキーウェアやベンチコートを着て手袋をはめ、再びパソコンに向かって作業を始めました。
 暖房がすべて切れ、マイナス20度ちかい外気がドアの隙間から入ってきたときの冷たさは、痛いくらいです。手袋をしているのでパソコンは打ちづらい。けれど素手だとあまりの寒さで指が動かない。キーボードを打つと寒さで指が痛みます。
 その状況で深夜まで働く日々が毎日続く。

(抜粋おわり)

当時、財政破綻したのは夕張市だけで、国や他の自治体からも一定の支援がありました。それでも市役所の職員はこれだけ厳しい状況に置かれます。

「日本創成会議」が2040年までに半数の自治体が消滅するおそれがあると発表しましたが、消滅の前に、税収の減少等で、財政的に立ちゆかなくなる時期が来ます。

全国の自治体で次々と財政破綻が起きる状況では、職員の境遇は、夕張市で起きたことよりも苛烈なものになるおそれがあります。

いざとなったら実家の家業を継げばよいという方は別です。そうでない場合は、自分が就職を考えている自治体の将来性を慎重に検討しておくべきです。

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