都庁採用後の配属先

配属先の違いは、期待度の表れではないかと心配している受験生もいるかもしれません。

都庁での最初の配属先については、採用案内などにも書かれていますが、実際に、採用順位と配属先は関係ありません。

例えば、採用試験の順位が一桁台でも、そのうち何人かは主税局配属となって、出先(都税事務所)スタートになります。なお、行政区分の場合、近年は1/4くらいが主税局配属のようです。

予備校に通っている場合であれば、受験仲間の間で、「〇〇さんは何位合格で何局配属になった」など、入都前にもいろいろ情報が入ってくるでしょう。

独学の場合、そうした情報が入りにくいため、「配属局の違いは期待度の表れでは…」などと疑心暗鬼になることもあるようです。

もっとも、研修や配属先で一緒になった同期と話をするうちに、上位合格だから官房系局や人気局に配属されるわけではなく、本庁スタートになるわけでもないと分かってきます。

なお、自治体によっては、合格順位や採用区分で配属先に差を付けるところもあるようですので、上記はあくまでも都庁の場合です。

都庁も30年くらい前までは、上位合格者を幹部候補とみなして処遇していた時代があったと聞きます。

今は、昇進については、主任試験、管理職試験にいつ合格できるか次第です。入都後は、採用時の順位など関係ありません。採用後の仕事ぶりを見ながら、徐々に選抜を行っていくスタイルです。

ただし、「昇進に差がついていない=評価に差がついていない」、ではありません。当面は横並びだと気を抜いていると、取り返しがつかないことになります。

人材育成の観点では、都庁の様々な部署の中で、新人の育成に向いている職場もあります。上司・先輩が後輩の面倒を見る時間的ゆとりがあって、都政の最前線で都民と直接向かい合う機会もあるタイプの職場です。

一方、入都後2、3年が経過したときに、将来の幹部・中枢職員となりうる人材の育成に適した職場もあります。こうした職場は数が限られますので、誰をそうした職場に異動させるか実質的な選抜が行われます。

また、配属先にせよ昇進にせよ、有名大卒だから配慮されるということもありません。局によって2年目か、3年目かは異なりますが、学歴に関係なく、意欲ある職員には、しかるべき部署から声がかかるようになっています。

一方、「自分は政策を扱う仕事しか望んでいない」「現場の仕事は向いていないから、成果を出せなくても仕方がない」と考えている人材の場合、自分の望む部署に移れる可能性はかえって低くなるかもしれません。

都の採用案内のパンフレットなどに、「都庁ではスケールの大きな仕事、国際的な仕事に携わる機会がある」とあるかもしれません。「機会がある」とは、「門戸が開かれている」の意味で、「全員一度は経験させてもらえる」という意味ではありません。

キャリア採用や技術職などの場合は、専門知識を活用できる部署に配属されることになると思いますが、行政(事務)職の場合は、庁内人材には少ない特殊なスキルや実務経験を有する場合を除いて、どこの配属になるか読めません。

産業、環境、都市整備などの施策を企画・実施する部門や、都政を取りまとめる政策企画、総務、財務を希望する方が多いようですが、これらの局は局定数自体が少ないこともあり、新規採用職員の配属数はそれほど多くありません。

官房系局と位置付けられる政策企画、総務、財務も、ある程度は人手が必要ということで、必要に応じて一定数の新採が配属されるとは思います。

もっとも、官房系局の中でも枢要とされる部署に関しては、他局で予算、人事、議会、制度企画などを経験済みの職員を引っ張ってくればよいので、実務能力が未知数の新採へのニーズは少ないでしょう。また、こうした枢要部署は基本的に多忙であるため、新採の育成まで責任を負うのは厳しいです。

定年まで都庁で勤務すると仮定すれば、15~20回は人事異動があると思います。早く希望の部署で働きたいという気持ちは分かりますが、まずは最初の1、2回目の配属先で、あの人はデキるという評価を固めて、3、4回目の配属先で希望する部署に満を持して異動できるよう布石を打てればよいのではないかと思います。

一つの課の中でさえ、庶務事務担当の係もあれば、政策立案を担当する係もあり、業務内容は様々です。
一方、局が異なっても、人事や会計など、ある程度共通する業務もあります。
〇〇局配属だから良かったとか、残念だったとか、一概には言えません。

最初の配属先が希望外だ、不得手な仕事だといって手を抜いてしまうと、熱意がない、仕事の選り好みをするタイプという人物評価が下されるおそれがあります。これでは、競争倍率の高い人気部署に異動できるチャンスは、ますます少なくなります。

現在の仕事で既に成果を出し、ステップアップとして異動を希望している職員と、今の仕事がうまくいかないので心機一転のため異動を希望している職員と、迎え入れる側が選択できるとすれば、どちらのタイプを選ぶかは明らかです。

本音を言えば誰でも仕事の好き嫌いはあるのでしょうが、安心して仕事を任せられる人材との評価を得るためには、まずは与えられた仕事で十分な成果を出すことが大事です。

この点は、採用試験の面接にも通じます。面接官は、過去のエピソードなどをもとに、受験生の思考・行動様式を検証し、「この人材を採用したら、どのような職員になりそうか」を見ています。


なお、出先がある局の場合は、まずは都の強みである現場を経験するために出先スタートのケースが多いようです。その後、わずか1年で本庁に異動させる局もあれば、2~3年出先を経験してからの本庁異動が慣行になっている局もあり、方針は局によって様々です。

新採の配属先としては、局の職員定数が多いこと、新人育成に適した現場があることから、主税局、福祉保健局が多いようです。

配属後に2~3年で出先から本庁へ、逆に本庁から出先へと局内異動する職員もいますし、他局へ異動するケースもあります。

入都3年目で、都税事務所などの出先から政策企画局などの官房系局に異動する職員もいますので、最初の配属局・部署でルートを決められてしまうということは全くありません。

都庁の場合、入った時の成績で将来のルートが決まるわけではありません。配属された職場で結果を出せる人、希望する部署で必要とされる能力を普段から磨いている人は、いずれ希望の職場へ異動できたり、枢要部署からお呼びがかかるようになります。

もっとも、毎回希望の部署にピンポイントで異動できるわけではありません。東京の大都市行政に携われるのであれば、基本的にはどの部署でも構わない、行政マンとしてのいい経験になる、というくらいの認識は持っておいた方が良いかもしれません。

配属先や人事異動に関する詳細については、 『本音の都庁インサイト』で、希望部署に異動するにはどういった手順を踏むべきか、出世コースに乗った場合、出世を諦めてのんびり働いた場合でどれくらい開きが出るかなど、シミュレーション等を紹介していますのでご参照ください。

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