都庁職員の年収-公務員は金持ちか-

以前、東京都の人事委員会勧告(平成24年)と併せて、都庁職員の年収モデルケース(40歳・係長)が公開されていましたが、この年収は約720万円でした。

また、今年度、都総務局が公表したデータによると、一般行政職(平均年齢41.6歳)で、平均給与月額が約45.2万円(地域手当、残業手当等込み。ボーナス除く)であることから、都庁の平均年収は、概ね上記モデルケースの水準でしょう。(平成28年4月1日現在の数値)

ところで、一般行政職の平均年齢については、都道府県平均は43.2歳です。都庁は他の自治体と比べて若い職員が多いということです。

雑誌などで自治体の平均給料ランキングが発表されることもあります。(「都道府県職員」には警察職、教育職が含まれ、一般行政職(いわゆる都庁(県庁)職員)のデータと異なることがあります)

こうしたランキングを見ると、東京都が1位になっていても、意外と2位以下とあまり差がないこともありますが、これは自治体ごとの平均年齢の違いも加味して考える必要があります。

都庁の場合、役職にもよりますが40歳過ぎなら、勤務歴を1年重ねるごとに、月給で1万円前後は昇給するとして、年収で15万円~20万円増えます。
(ここでは勤務成績が標準だった場合の定期昇給分だけを考慮しています。上位役職に昇格した場合はさらに増えます)

 ※ 一定年数以上同じ役職のまま(要はあまり出世せずに)勤務歴を重ねた場合、毎年の昇給幅が徐々に減少するように給料表が設計されています。定年まで毎年15万、20万円と年収が増え続けるわけではありません。

なお、国税庁「民間給与実態統計調査(平成26年分)」によると、全国の労働者の平均給与は年415万円です。
母集団にはパート従業員等も含まれていますが、近年、新卒者ですら非正規雇用の割合が増加していることから、この数字は雇用の全体像を表していると言えるのではないでしょうか。

ちなみに、厚生労働省「平成27年 賃金構造基本統計調査」によると、個人で年収700万円以上というのは、一般に年収が多い40代~50代の世代の中でも上位10%に悠々と入る水準です。

また、以下は同調査の役職ごとの賃金データです。都市部と地方を合せた全国平均ですので、実際には地域差がありますが、社員100人以上の規模を有する企業で、部長、課長といった役職者でもこの水準が平均的だということです。


出典「賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)

こうしたデータからは、都庁の給与水準はかなり高いと言えそうです。

一方で、国内企業でも、トップクラスとなると平均給与1,400万円という企業もあります。平均給与が1,000万円を超えている企業もいくつもありますので、こういった企業に比べれば、都庁の給与は「公務員らしい」金額に見えるかもしれません。

それでも、公務員(特に地方公務員)の特性から、世帯単位の収入で見ると公務員が優位になっている点があります。

それは、夫婦共稼ぎのケースが多いということです。

都庁をはじめ地方公務員の場合、基本的に転勤がありません。夫婦とも地方公務員、あるいは地方公務員と転勤のない民間企業社員の夫婦であれば、配偶者の転勤に付いていくために仕事を辞めなければならない、ということがありません。

また、公務員の場合、結婚や出産を機に辞めるケースは非常にまれです。(産休・育休後の職場復帰は当然のことと捉えられています)

夫婦とも都庁職員の場合、特に出世の道を歩んでいなくても、40歳前後で世帯収入が1,400万円前後になります。夫婦の双方が課長級という場合は、2,000万円前後の水準になるでしょう。

厚生労働省「平成26年 国民生活基礎調査」によると、世帯収入の全国平均は約529万円(中央値は415万円)です。
この統計によると、世帯収入1,400万円は上位3.8%、2,000万円は上位1.2%の水準となっています。

ところで、同じ世帯収入1,400万円でも、夫婦それぞれが700万円稼いでいる家庭もあれば、例えば、大手企業勤務の夫が1,400万円を稼ぎ、妻は専業主婦という家庭もあります。

世帯収入で見ると同じ水準のはずですが、家庭ごとの金銭感覚、消費性向は大きく異なるケースが多いようです。

別の例を挙げると、大手企業勤務で1,000万円を稼いでいる夫と専業主婦の家庭であれば、20代後半から30歳くらいの若い都庁職員夫婦と同じような生活水準となるはずですが、様々なケースを見ても、「1,000万円プレーヤー」という心理も作用して、なかなかそうはなりません。

なお、これまで都庁職員の平均的な年収について考察してきましたが、当ブログ他記事でもご紹介しているように、公務員の世界でも「何歳になれば(誰でも)年収いくら位はもらえる」とは必ずしも言えなくなっています。

平均年収は組織の全体像を知る上での参考にはなりますが、これからの時代は全員にその水準が保証されるわけではありません。

かつての公務員の給与(昇進)制度に比べて、上にも下にも差が開きやすい制度へと徐々に変わっています。これから公務員になる方は、こうした変化が今後もさらに進展する可能性が高いことに留意する必要があります。

都庁での昇給、昇進に関する詳細については、拙著 『本音の都庁インサイト』でも、出世コースに乗った場合や、出世を諦めてのんびり働いた場合でどれくらい開きが出るかなど、シミュレーション等を紹介していますのでご参照ください。


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